3/20付で農林水産大臣及び参議員議長、衆議院議長に主要農作物(米・麦・大豆)の 種子生産に関る政策への意見を提出しました。
2023年3月20日
農林水産大臣 野村 哲郎殿
参議院議長 尾辻 秀久殿
衆議院議長 細田 博之殿
主要農作物(米・麦・大豆)の 種子生産に関る政策への意見
たねと食とひと@フォーラム
弊会は、2018年より全都道府県に対して「主要農作物種子法(以下、種子法)廃止法施行後の措置等に関するアンケート」を、毎年実施してきました。
2022年5月に、「種子法が廃止されて5年目を迎え見えてきた課題」について同アンケートで尋ねたところ、「都道府県間連携が重要」「今後も国の財政措置が必須」「県内種子価格との差が生じた場合や品質・事故が起きた場合の対応、県内の種子生産農家や組合等の合意形成が課題」といった意見があがりました。
都道府県間連携の重要性及び都道府県の取り組みが後退することのない財源確保の重要性については80%以上の自治体が「重要」としています。また、財源確保のための国の制度等については、75%が「必要」と回答しました。種子の流通確保のしくみに関しては、他県との連携の仕組みの必要性があげられました。国外流出防止策に関する主な意見としては、「種苗法に期待する」という回答が複数ありました。
種子法廃止時に懸念された問題点及びこの5年間のアンケート調査における都道府県の回答から見えてきた課題の解決に向け、以下の通り意見書を提出します。
根拠資料として、5年間のアンケート調査結果及び専門的研究者による講評を添付します。
【意見】
「食料安全保障」を強化し、「食料主権」「自給力」を維持していくため、国の責任において取り組むこと
① 主要農作物の優良な種子の安定供給のための財源確保を将来にわたり担保する法令整備が必要です。
② 主要農作物の優良な種子の流通確保及び都道府県間連携のための新たなしくみが必要です。
③ 主要農作物の種子の国外流出防止策の整備にあたっては、農業者へのさらなる負担が生じないよう留意が必要です。
④ 主要農作物の種子の独占による弊害の防止策のひとつとして、日本農業の強みでもある「地域性に富んだ多様な食と農」を維持するため、支援策の充実と強化を求めます。
⑤ 主要農作物の種子へのゲノム編集技術活用の規制について、ゲノム編集技術応用作物・食品・種子や肥料原料の安全性審査、環境影響評価、表示の義務化を求めます。
国と都道府県間連携において取り組むこと
① 主要農作物の種子生産の現場において、気候変動への対応を目的とした栽培体系の見直しや品種開発など、国と自治体との共同取り組みとして、全国主要農作物種子安定供給推進協議会などを通じて、持続的な情報共有や研究、生産者への支援策を推進することを求めます。
② 地域農業振興の支援策を推進することを求めます。
③ 広域災害時に対応できるよう、種苗の備蓄体制の整備と都道府県間の連携システムを構築することを求めます。
【追記】
主要農作物等の種子生産を継続する理由について、44道府県の回答はいずれも「安定供給」「品質確保」「農業振興」「県の責務」に関する記述でした。
2022年12月末、気候変動や環境負荷、社会的側面からは経済安全保障リスクの高まりなど、世界的な食料危機が報道される中、政府では食料安全保障強化政策大綱が決定されました。2020年農林業センサス調査結果では基幹的農業従事者は136万1000人で5年前に比べて39万6000人減、100万人を割るのも目前となっています。平均年齢が65歳以上と高齢化し、1億を超える人口の食を支える農業従事者と農地面積の減少による脆弱化が現実となっています。
制定後約20年が経過する食料・農業・農村基本法についても、将来に向けた課題に対応するための検証が急ピッチで進められており、2023年6月を目途に、食料・農業・農村政策の新たな展開方向が取りまとめられることになっています。新たな食料・農業・農村政策には、地域から食と農のつながりを再構築するローカルな食のシステムづくりへの視点が求められます。種子法廃止の時のように、生産現場や消費者を置き去りの論議にならぬよう、コンセンサスの形成過程における現場の意見を十分に取り入れるよう強く求めます。
【資料】
第5回2022年度都道府県の主要農作物等種子生産状況に関するアンケート調査結果報告
https://nongmseed.jp/archives/5537
第5回2022年度 主要農作物等の種子生産に関する追加アンケート結果まとめ
https://nongmseed.jp/archives/5703
第5回2022年度主要農作物等種子生産状況に関するアンケート調査結果への講評
https://nongmseed.jp/archives/5685
第1回(2018年4月実施)アンケート調査結果 https://nongmseed.jp/archives/2866
第2回(2019年4月実施)アンケート調査結果 https://nongmseed.jp/archives/3742
第3回(2020年4月実施)アンケート調査結果 https://nongmseed.jp/archives/4255
第4回(2021年4月実施)アンケート調査結果 https://nongmseed.jp/archives/4982
以上