2018年より全都道府県に対して実施している「主要農作物種子法廃止法施行後の措置等に関するアンケート」で、今年度5月に、「種子法が廃止されて5年目を迎え見えてきた課題」について尋ねたところ、「都道府県間連携が重要」「今後も国の財政措置が必須」「県内種子価格との差が生じた場合や品質・事故が起きた場合の対応、県内の種子生産農家や組合等の合意形成が課題」といった意見があがりました。
そこで、今年10月に追加アンケートとして、次の項目について各都道府県の見解をお聞きし、長野、広島、徳島をのぞく全自治体から回答をいただきました。
<追加アンケート項目>
1.都道府県間連携の重要性について①(重要と思う・思わない・その他)、②連携について、具体的に検討されていること
2.都道府県の取り組みが後退することのない財源確保の重要性について ①税源確保について(重要と思う・思わない・その他)、②財源確保のための国の制度等について(必要・必要でない・その他)、③財源に関するご提案やご意見
3.主要農作物の優良な種子の流通確保のしくみについて
4.主要農作物の種子の国外流出防止策について
5.主要農作物の種子の独占による弊害の防止策について
【回答結果】
1.都道府県間連携の重要性、2.都道府県の取り組みが後退することのない財源確保の重要性については80%以上の自治体が「重要」としています。また、財源確保のための国の制度等については、75%が「必要」と回答しました。
3.種子の流通確保のしくみに関する主な意見としては、他県との連携の仕組みの必要性があげられました。
* 種子協会や全種協による種子需要・供給量の把握や、都道府県間連携による調整を推進し、優良種子の確保に努める必要があるが、県内種子価格との差が生じた場合や、品質で問題が生じた場合の対応等課題もある。(秋田)
* 本県も種子の生産・供給に余裕があるわけではないため、他県、あるいは民間事業者との連携により、効率的な種子の生産・供給が可能な体制がとれるとよい。また、県では「広く」普及する品種の種子生産・供給に重きをおいているが、米粉用など様々な用途の品種が出てきている中、小面積しか普及していない品種の種子を、誰が安定的に供給するかも1つと課題と考える。(茨城)
* 品種の多様化や気候変動による不作等に対応するためにも、他県との広域連携が必要と考える。県単独では実施困難であり、国に広域連携の仕組み作りをお願いしたい。(栃木)
* 種子生産者や産地の確保が年々難しくなっていることから、国が各県の種子生産体制の余裕や逼迫の状況をとりまとめ、各県へ情報提供するなど、都道府県間の情報交換を促進するしくみがあると助かる。(埼玉)
* 種子の安定供給のためには、不測の事態に応じて近隣他府県と連携して種子を融通し合える仕組みが重要である。そのため、近隣他府県の需給情報を正確に把握する必要がある。(大阪)
* 種子を安定的に流通させるため、備蓄体制の整備、災害時の他県との連携が必要(福岡)
* 倉庫の確保に例年苦慮している。(宮崎)
4.国外流出防止策に関する主な意見としては、「種苗法に期待する」という回答が複数ありました。
* 改正種苗法(令和2年12月成立)による、登録品種の海外への持ち出しに対する抑止・禁止。(青森・秋田・千葉・新潟・兵庫・高知・長崎・熊本)
* 種苗法の改正に伴う県の対応は以下のとおり。(新潟)
・県育成品種の登録品種(出願中含む)について「海外持ち出し制限」品種として届出し、公示済。
・県育成品種の品種登録出願を行う際は、原則「輸出を認めない」「栽培を県内に限定」として届出。
・指定種子生産団体が一括して登録品種の表示義務に対応。(種子袋に「海外輸出禁止」の表示を追加)
* 海外の品種登録による、育成者権の確保。(石川)
* 海外での品種登録出願に対する国の支援、生産者等に対する品種登録や知的財産制度の周知(岡山)
* 外国での品種登録や商標登録/流出者に対する国内の罰則強化(福岡)
* 国外流出防止対策については、政府に対策の徹底をお願いしたい。(大分)
5.種子独占による弊害防止策に関する主な意見は「対応している」というものでした。
* 県では種子は適正な価格で流通されるよう、生産体制を整備。(青森)
* 地域に適する品種を育成しているかぎり、少なくとも県内で種子供給を自己完結できる体制が構築されているため、種苗会社による独占による弊害は防止できると考えられる。(秋田)
* 主要農作物の種子の独占は想定されない(高知)
* 独占による種子の価格高騰などの防止策として、主要農作物の奨励品種の優良な種子を低廉かつ安定的に生産及び供給する体制を将来にわたって維持することを県の責務としている。(長崎)
2022年度 主要農作物等の種子生産に関する追加アンケート結果まとめ