たねと食とひと@フォーラムは、たねといのちの多様性と持続性のために活動しています。

シンポジウム報告書

 2月24日土曜日、明治大学リバティタワーにて開催したシンポジウム「ゲノム編集食品が食卓へ~表示とトレーサビリティの必要性~」に、130名の参加がありました。政官民各方面からの関心も高く、大変内容の濃い3時間余りのイベントとなりました。

 東京大学大学院理学系研究科教授の塚谷裕一さんからは「ゲノム編集作物の健全な利活用のためには」わかりやすく具体的な事例を交えて誤解や危険性についての説明から課題と提案をお話いただきました。北海道大学安全衛生本部教授の石井哲也さんからは「ゲノム編集食品の表示のあり方を考える」のテーマで従来の育種法や遺伝子組み換えとゲノム編集技術の違いを理解し、ゲノム編集農産品や食品表示を社会的観点から考え直すという問題提起がされました。続いて、血圧を下げるといわれる高ギャバトマトの種子を生産、販売する事業者サナテックシード株式会社代表取締役会長の竹下達夫さんからはゲノム編集をおこなう種苗会社としての役割や理念について報告がありました。NHK報道局 科学・文化部記者の水野雄太さんからは、一足早くゲノム編集食品の流通が始まっているアメリカを取材した際の取材秘話を交えて、目前に迫るゲノム編集が流通する未来について興味深いお話を聞くことができました。2019年12月から活動を開始した、当会ゲノム編集食品調査チームからはトマトジュースメーカーに実施した調査結果についての報告がありました。

 シンポジウム当日、会場からいただいた質問に、後日登壇者より回答をいただきましたので以下に掲載します。

 シンポジウ「ゲノム編集食品が食卓へ」会場質問へ登壇者より回答

 シンポジウム「ゲノム編集が食卓へ~表示とトレーサビリティの必要性~」報告書 2020年3月に発行

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ゲノム編集食品調査チーム活動報告

 「ゲノム編集食品が食卓に上がる」いよいよこれが現実味を帯びてきた昨年末、ゲノム編集食品調査チームは7人で発足しました。ゲノム編集という言葉の未知で難解なイメージから、違和感に戸惑うだけではなく、市民目線で積極的に調査を行い、広く課題を共有しようという試みです。

 まず調査チームでは、日本で製品化に一番近いと言われるトマトに着目し、それを原料とする「トマトジュース」を製造販売する大手食品会社への公開質問を行いました。事業者のゲノム編集作物利用に対する姿勢を確認することを目的とした調査ですが、回答のあった7社が「現在のところは、ゲノム編集トマトへの切り替え予定はない」との答えで、各社のゲノム編集食品に対する姿勢については、1社を除き、予定がないことを理由に明確な回答はありませんでした。しかし、こうした調査が、消費者がゲノム編集の使用に注視していることを伝える大きな意味もあると考え、引き続き取り組んでいきます。 トマトジュース原材料調査結果

 2月24日のシンポジウムでは、様々な立場から、ゲノム編集食品に対する適切な規制のあり方を問う提言がなされました。私たちもトマトジュース調査の結果を伝え、研究者、開発者、メディアの方々と並んで消費者の立場でパネルディスカッションに参加しました。

 表示の必要性とトレーサビリティの確保という共通項はありながらも、ゲノム編集に対する考えは、パネラーそれぞれが違う見解を持っていました。故にもシンポジウムは非常に興味深い内容となりましたが、多様な意見がある中で、表示を求めていく上では、表示方法など、議論すべき課題が多くあることにも気づかされました。

 社会の中で起きていることに、私たちの暮らしと無関係なものは何一つありません。今後は、実験段階にあるゲノム編集食品の開発現場を取材してみようという企画も進行中です。消費者自身が実際に目で見て、話を聞いて、未知の領域にあるゲノム編集食品を身近に引き寄せ、自らの問題として考えたいと思っています。その上で、トレーサビリティを確保し、表示の義務を求め、私たちの「食の選択」を守る一助となるようにと、調査チームの活動は続きます。

 さらには、ゲノム編集食品に関しては、「よくわからない」という圧倒的多数の声に答えるツールとして、小冊子の発行を予定しています。手に取りやすい、キャッチーでわかりやすい解説本を目指して制作していますので、どうぞご期待ください。(調査チーム 青木マキ)

以上


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