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9月29日にシンポジウム「ゲノム編集に規制は必要か」を実施しました。ゲノム編集の農業応用をめぐり異なる立場の代表をお招きし、規制のあり方について議論しました。参加者は121名。シンポジウム当日に参加者からたくさんの質問が寄せられ、後日パネリストが寄せてくださいました回答を掲載いたします。尚、全体報告につきましては近日中に当サイトにて掲載いたします。

環境省への意見提出(10/19締め切り)「ゲノム編集技術の利用により得られた生物のカルタヘナ法上の整理及び取扱方針について(案)」に関する意見募集について 

基本用語集

 2018年9月29日シンポジウム「ゲノム編集に規制は必要か」参加者からの質問への回答

(回答者・敬称略)

質問 北海道でゲノム編集の種は植えられているのか?について

回答 今回は恥を忍んで、今までの思い込みの訂正をあえて行わせていただきます。日経バイオテクの記事にはなっておりませんでしたが、講演などで皆さんにお伝えしていた「2013年から米DuPont社・米Pioneer Hi-Bred社が米農務省から非遺伝子組換えであるという認定を受けた、Seed Production Technology(SPT)で作出したトウモロコシのF1種子はZnフィンガーやTALENというCRISPR/Cas9の前の世代のゲノム編集技術で作出された交配親で作出したもので、我が国は米国に倣ってSPTを非組換えであると世界で一番早く是認した」という誤認です。確かに、当時のインタビューではGene Editingと聞き取ったのですが、今になって事実関係を再調査してみると、確かにこれは誤報でした。謹んで訂正させていただきます。しかし、さらに調べてみると、今回日米で非組換え体と認定された根拠は、挿入された遺伝子がF1種子には残っていないという理由でした。組換え技術で挿入された遺伝子が残っていないから非組換え体と認定したことは、ゲノム編集で特定の遺伝子を欠失した品種は非組換え体として見なすとした環境庁のカルタヘナ法の適用方針(現在パブリックコメント中)に、強い根拠を与えるものとなりました。つまり強力な前例があったのです。 (宮田満)

【日経バイオテクONLINE Vol.3018 Mmの憂鬱、ゲノム編集と誤認していたSPTは、ゲノム編集規制の前例となるか?(2018.10.04)宮田満】より転載

 

質問 前にゲノム編集カフェをやったことがあります。先日の毎日新聞の記事の中で大澤さんがゲノム編集の委員会の中で「DIYバイオは日本で作っていないから」と発言したことを受けて、彼に直接問うたところ、「日本ではカルタヘナ法が知られていない」と述べていました。遺伝子ノックアウトであればカルタヘナ法は一切関係ないのに、何故、カルタヘナ法が知られていないからDIYバイオは作られていないことにされ、ゲノム編集について関心を持ってはいけないのでしょうか

回答 ゲノム編集について関心をもっていけないことはなく、むしろ社会の中でもっと関心を持ち、皆で議論していく必要があると思います。関心を持つことが、しっかりと国の担当者や委員会が規制の在り方について考えることにつながると私は考えます。(荒木涼子)

 

質問 どのような育種法であれ、できてくる新品種の性質は個々に違うので、方法ごとではなく、ケースバイケースで考えることのほうが大切ではないでしょうか

回答 国際条約カルタヘナ議定書は、環境に影響しうる「現代のバイオテクノロジー」として遺伝子組換え技術を規制することにしています。議定書ではゲノム編集の取り扱いは決まっておりません。一方、議定書加盟国(ニュージーランド、EU)で「現代のバイオテクノロジー」に当てはまると判断する動きもあります。日本がそうした判断をとる場合、ケースバイケース(例えば、環境に影響する形質をもつか否か)で判断することもあり得ると考えます。(石井哲也)

 

質問 ゲノム編集技術が動物に応用される時代を想定し生命倫理の観点を論じる必要性はないのか。

回答 食用の遺伝子組換え動物は植物と違い、承認例はほとんどありません(サケ程度)。これは科学的な側面より倫理的側面が大きいためとみております。同様にゲノム編集動物の議論も必要だと考えます。小生の岩波新書「ゲノム編集を問う」でその一端に触れております。(石井哲也)

 

質問 外来遺伝子の導入のないゲノム編集作物には確実な検出方法がありません。つまり、実際にはゲノム作物を規制しても、嘘をつく人が堂々と規制を免れることができます。このような規制は実効性を持ち得るものでしょうか。

回答 その様な規制は実効性があるか、ですが、ある程度はあると考えます。例えば、刃物は銃刀法で一定以上の刃長を規制しておりますが、10cm程度の刃物でも殺人に使うことはでき、包丁は広く売っている。一方で、実際に包丁で殺人は起きています。銃刀法に実効性がないという非難はあまり聞かないです。同様に、ゲノム編集の規制は、行為規制自体は限定されるかもしれませんが、試薬販売や研究者ライセンス制などやりようはあるかもしれません。そういったやり方では実効性は限られるかもしれませんが、規制の意義はあると考えます。(石井哲也)

 

質問 ブルーギルの不妊化のゲノム編集について、このような使用法は一部では素晴らしいと思う反面、予期せぬ事が起きている気がして不安だが、現在の法律で放し飼いは可能か?また、考えられるリスクは?

回答 動物の不妊化のためにゲノム編集を使う場合、現在の技術ではゲノム編集の遺伝子を動物ゲノムに組み込む必要があるので、遺伝子組換えになると考えられ、カルタヘナ法規制の対象となると考えられます。考えられるリスクは環境中で導入遺伝子に変異が起き、かえって繁殖力おう盛になってしまうことなどです。(石井哲也)

 

質問 現在、環境省、厚労省の議論は「遺伝子組換え」に相当するかという形で行われていますが、ゲノム編集自体の安全性、懸念の議論こそすべきではないでしょうか。今後出てくると予想される遺伝子操作技術も同様だと思います。安全性の評価は遺伝子組換えでは「実質的同等性」の評価ですが、消費者から見て全く納得できません。せめて長期毒性試験を試験すべきだと思います。どのような考えでしょうか。

回答

技術に即したリスクを考えるべきだというご意見だと理解しました。同感です。少なくとも、オフターゲット変異については、個々の応用でどのような評価法を使うか、合意が必要でしょう。しかし、環境省はそれを考えないようです。また、多重改変を控えるなどの方策もとりえますが、そういうリスクを低減する取り組みも環境省ではほとんど議論ありませんでした。(石井哲也)

ゲノム編集で遺伝子組み換えに当たらない可能性のある欠失変異体などを環境中で栽培・飼育する場合は、安全性を考察•評価を行う必要があると考えます(毒性やアレルゲンとしての可能性や環境への影響について)。期間については対象とする生物ごとにケースバイケースで考えて行く必要がるかと考えます。(山本卓)

 

質問 J.R.シンプロット社が開発したアクリルアミド低減+打撲黒斑低減加工用ジャガイモは既に輸入されていますか。

回答 農林水産省HPをごらんください。(石井哲也)http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/seibutsu_tayousei.html

 

質問 ゲノム編集に置いて、ノックアウトは自然な突然変異と同じで、ノックインは自然な突然変異ではないとの説明でした。自然界で起こる突然変異は遺伝子欠損のみで、ノックインのような他遺伝子が加わることはないのですか。

回答 自然界で細胞核のDNAが切断されることは頻繁に起こっています。その結果、しばしば欠失変異(数塩基から数十塩基)が誘導されます。一方で、DNAが切断された箇所に短い配列が挿入されることは自然界でも起きます。また、トランスポソンなど水平伝搬などで本来その生物が持っていない遺伝子(外来遺伝子)の挿入が起こります。(山本卓)

 

質問 遺伝子ノックアウトは安全であるならば積極的に使っていった方がいいが、遺伝子ノックイン(組換え)なら止めた方がいいと思われる理由を教えてください。

回答 遺伝子ノックアウトは自然突然変異に近いレベルの変異が多いので安全性を確保できる技術と考えます(もちろん考察・評価を行う必要はあります)。遺伝子ノックインについても有用なものは、評価を行った上で使っていくことも必要だと思います。(山本卓)

 

質問 日本でゲノム編集で開発されている具体的な品種を教えてください。クリスパーキャス9て何ですか?

回答 国内では、トマトやジャガイモやイネでのゲノム編集での品種改良が進められています。CRISPR-Cas9は目的の遺伝子を切断するシステムで、切断されたDNAを修復する過程で遺伝子に変化を加えるための酵素複合体です。(山本卓)

 

質問 ノックアウトは突然変異と同じで規制の必要はないとのご意見ですが、EU司法委員会は、そこを含め規制が必要としています。先生とEUの意見の違いの根拠はどこにあるのでしょうか。

回答 遺伝子ノックアウトを規制する必要がないとは考えていません。EUで認めている突然変異育種とゲノム編集での遺伝子ノックアウトは同等の可能性があるので、きちんとした評価・考察した上で、野外で栽培・飼育することが必要と考えています。(山本卓)

 

質問 なぜゲノム編集をやろうとしているのか?確実性、開発費、安全性は?

回答 ゲノム編集は基礎研究には必要不可欠な技術となっています。日本国内の基礎研究力を高めるために必要な技術である一方、産業利用においても有効ですので安全性を確認しながら利用する技術と考えています。(山本卓)

 

質問 遺伝子ノックアウトがこれまでの突然変異と同レベルなのは理解しましたが、遺伝子ノックインも進めようとされているのでは?それが進むとどのような可能性とリスクが広がるのでしょうか?利益等考えて進めるのなら、力点はそちらのウェイトのほうが大きいのではないでしょうか。

回答 自然突然変異と同じレベルの遺伝子ノックインについては、これまでの突然変異育種と同じ扱いにできる可能性があります。そのためゲノム編集では狙うことによって短期間に有用な作物を作出できると期待されています。遺伝子ノックインについては基本的に遺伝子組み換えに当たるので、これまでの評価に従って安全性を確認して消費者や生産者に有用なものを作出することも必要かと思います。(山本卓)

 

質問 遺伝子ドライブでマラリア蚊全滅の実験が成功したようです。間違って関係ない蚊などと交配して世界中の蚊が全滅したりしないか気になりますが、DIYバイオなどでそういうものも「届け出制」で作ってしまったりすることは考えられるでしょうか。

回答 遺伝子ドライブでは外来遺伝子を組み込んだシステムを使うので、これらを持つ生物は遺伝子組換え生物となります。したがって、国内では法律で規制されます。また、国内では遺伝子組換え実験は事業所(企業、大学、研究所等の機関)での実施が想定されており、そこでは遺伝子組換え生物の安全な取り扱いについて検討する委員会など設置して安全管理に努めることになっています。(山本卓)

 

質問 ゲノム編集のデメリットとして、オフターゲット作用がありますが、間違って編集されたものは後から取り除かれたり、分解されたりするなど解決策はすでに研究されているのですか

回答 オフターゲット作用については、その作用を低減する技術が今開発されつつあります。CRISPR-Cas9の特異性を向上される方法や治療であれば目的通りに遺伝子を修正した細胞を選別する技術が開発されてきています。(山本卓)

 

質問 食料の安定供給こそが消費者への最大のメリットではないでしょうか。

回答 食料の安定供給はもちろんですが、長い目で見る必要があります。多様で地域性に富んだ日本の風土にふさわしいのは、小さなコミュニテイに支えられた持続可能な農業です。ますます高齢化と少子化の進む日本の食と農のために必要なのは、そうした自給型の農の在り方を地域ぐるみで支援する政策ではないでしょうか。(吉森弘子)

 

質問 パブリックコメント以外にステークホルダー(市民)が意見を表明する方法はありますか

回答 現状では、審議会、委員会等への市民参加が考えられます。日本では、ゲノム編集に限らず、社会的合意形成の手法が未熟で、意思決定の過程が非常に閉鎖的です。近年、韓国で実践されているような「熟議民主主義」に学び、利害関係者が幅広く参加した討論型世論調査による国民的論議を積み重ねて意思決定をする等、より民主的かつ妥当性のある公論形成の過程が必要だと考えます。立憲民主党が、「原発ゼロ法案」を市民との対話により作成した事例も参考になります。今回のシンポジウムは、現状を打破すべく、多様な論者による討論方式としました。(吉森弘子)

 

質問 農水省、飼料安全法「飼料としての安全性」についてどこまで進んでいる情報でしょうか

回答 検討のスケジュールはまだ提示されていないのでわかりません。但し、日本で開発されている超多収型イネは、飼料自給率アップと安定供給、水田フル活用が目的とされる飼料栄養価の高いコメ(1トン/10a 超)です。また、今回のシンポジウムでパネラーの宮田さんから報告された北海道で商業栽培されている青刈りトウモロコシは、「ゲノム編集を利用して得られたものではない」と農水省の方から発言がありましたが、牛のサイレージ飼料に活用されるものです。(吉森弘子)

 

質問 レジュメ60ページ 超多収型ゲノム編集イネは「シンク能改変稲」と同じものでしょうか?今年度はすでに収穫されていると別の学習会で聞きましたが、「飼料用米として活用」の可能性あり?なのでしょうか。これまでの種子改良には使われていなかったものが知らないうちに使われ、加工用米としても流通するようになるのでしょうか

回答 農研機構が、つくばの隔離ほ場で、平成29年度、平成30年度に栽培実験をしている「ゲノム編集技術により作出されたイネ(シンク能改変イネ)は、穂の形態や籾のサイズを制御する遺伝子に特異的な変異を導入し、籾数や籾重を増加させることで収量の増加を目指したイネです(農研機構HP)」。飼料用米としての活用は、平成27年9月に農林水産技術会議事務局が作成した「新たな育種技術研究会報告書の概要-ゲノム編集技術等の新たな育種技術(NPBT)を用いた農作物の開発・実用化に向けて-」等でも、「飼料栄養価の高いコメの開発による自給率向上対応」と示されています。知らないうちに使われて流通するようなことにしないためにも、生産者・消費者からの意見表明が必要です。政策形成が民主的に進められているかどうかについても、市民による監視の目が必要だと考えます。(吉森弘子)

 

質問 科学的開発は過去からずっと同じ道をたどっている。プルトニウム発見しかりです。使い方次第で悪にもなるものを「想定外」で済ませていいのか?私は菊地さんと同じ思いです。

豊かな生活をはきちがえない日本人でありたい。便利さばかり追求しないで、もったいない心やほどほどの幸せ、そして、いのちのあるものを食する感謝の心をいま一度持ちませんか?単にノスタルジーでしょうか。

回答 自然にあるものに感謝し、自然と共存できる方向を考えつつ、人類の幸せも追求する。そのために科学技術を発展させられたらいいですし、科学技術がどのようなものであるか、研究者以外の私たちも知っていく必要があると思います。(荒木涼子)

そういった価値観、観点は重要だと考えます。特に、日本における食についてはそう感じます。一方、社会レベルでそのような考えが共有されるには一層個々人が、あるいは団体レベルで意見表明(今回の環境省パブコメなど)をしていくことが重要だと考えます。(石井哲也)

同じ思いです。ゲノム編集技術の医療応用については今回のテーマではありませんが、やはり倫理面における多角的で慎重な議論が必要です。想定される「遺伝子格差」社会の到来等も、警戒するべきことでしょう。ゲノム編集は、画期的な技術であるが故に慎重さも必要なことから「両刃の刃」とも形容される技術です。新しい技術がきちんと世の中に受け入れられていくとすれば、それは研究者と社会が、共通の願いと共通の十分な理解の上で、リスクに対する責任をも分かち合う覚悟を持てた時となります。丁寧な議論が必要です。そして、その議論の中では、市民一人ひとりが主体的にどのような未来社会を描くのかを明確に示していくことが、あらゆる場面で科学の暴走を押しとどめる力になります。(吉森弘子)

以上

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