消費者庁では、2017年4月から「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」を開催し、遺伝子組換え表示制度の在り方について検討されました。この検討会 が2018年3月に取りまとめた報告書において、今後の遺伝子組換え表示制度の在り方の方針が示されました。 その内容を踏まえ、新たな遺伝子組換え表示制度に係る食品表示基準の一部 改正案が出されました。現在意見募集(締め切り11月8日)が行われています。
改正案では義務表示の拡大はなく基本的に現行通りとし、任意表示の「遺伝子組換えでない」表示はタンパク質やDNA成分が検出されない場合に限るとされています。
当会の意見として、全ての加工食品に表示を義務付けること、任意表示の厳格化に対して、全ての加工食品に表示義務を課してから後に検討すること求めます。
食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)に関する意見募集について 締め切り11月8日
たねと食とひと@フォーラムの意見
該当箇所 新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)3ページ
意 見 全ての加工食品を義務表示の対象にすべきです
理 由
現行制度では、義務表示の範囲が限定されているため、店頭で「遺伝子組換え」や「遺伝子組換え不分別」という表示をほとんど見かけません。消費者は選択の機会を事実上与えられていない状態で、知らず知らずのうちに遺伝子組換え食品を手に取っている状態です。事実に即した表示にすべきです。
加工後に組換えDNA、由来タンパク質が検出されるかどうかという、いわゆる「科学的検証」のみを表示義務の範囲を決める際の根拠とするのでは不十分です。「科学的検証」に加えて、流通過程の各段階で分別生産流通管理証明書や規格契約書等を提出させ、それらを総合的に勘案するいわゆる「社会的検証」(伝票、納品書、帳簿等のチェック)を根拠とすることを求めます。
該当箇所 新たな遺伝子組換え表示制度に係る考え方(補足資料)5ページ
意 見 混入率5%以下で新設される任意表示については、全ての加工食品を義務表示の対象とした後に検討すべきです。
理 由
1 「遺伝子組換えでない」と表示される食品は激減
現行制度では、義務表示の範囲が限定されているため、店頭で「遺伝子組換え」や「遺伝子組換え不分別」という表示をほとんど見かけません。このように義務表示の範囲を狭めたまま、任意の「遺伝子組換えでない」表示を混入率0%(不検出)と厳格化した場合、「遺伝子組換えでない」と表示される食品は激減する恐れがあると予想されます。
たとえば表示義務のある豆腐では、混入率5%以下まで分別された原材料から製造されている場合には、これまでなら「原材料:大豆(遺伝子組換えでない)」と表示できていました。ところが改正案にある新制度ができた場合には、「原材料:大豆」としか書けなくなります。これでは、原材料の大豆に95%以上の遺伝子組換えでないものを使っていても、そのことが消費者には伝わりません。
改正案では表示義務のない食用油、醤油、糖類などの場合は現行制度と変わりません。つまり遺伝子組換えの原材料を使用していても、「遺伝子組換え」や「遺伝子組換え不分別」と表示する必要はありません。遺伝子組換えでない原材料を分別して使っていても表示に反映できない一方で、表示義務のない食品では、ほとんどの原材料が遺伝子組換えであっても表示する必要がありません。このように、同じように表示が無い場合でも、意味が違ってきてしまいます。
2 分別生産流通のシステムが無くなる可能性
そうなれば、遺伝子組換えでない原材料の分別を適切に実施してきた事業者にとって、その努力を消費者に伝える機会が失われることになります。それはまた消費行動にも影響を及ぼします。その結果、遺伝子組換えでない原料を調達するためのシステム自体が無くなくなる可能性も出てきます。
3 消費者は遺伝子組換え食品を避けたいと思っても避けられなくなるばかりか、遺伝子組換えでないものを選ぶ機会をも失うことにもなります。
4 国産農産物であっても「遺伝子組換えでない」表示はできない
国産農産物については、いまのところ遺伝子組換えの栽培は行われていないため、遺伝子組換えでないと考えられますが、分析技術が進歩している現在、遺伝子組換えと非遺伝子組換え原料を使用している工場では、何らかの原因で微量でも混入した場合、組換えDNAが検出される可能性はあり、「遺伝子組換えでない」表示はできません。
5 プレミアム価格がついた高価な「遺伝子組換えでない」表示の食品と遺伝子組換え不分別の原料を使った食品の二極化も懸念されます。
以上