たねと食とひと@フォーラムは映画「たねと私の旅」を応援し、自主上映会の開催を呼び掛けています。このたび、この映画を日本で上映するために、配給会社たんぽぽフィルムズを立ち上げ、字幕も翻訳されている藤本エリさんに本作品への思いを伺いました。2025年12月
監督:オーブ・ジルー
配給・宣伝:たんぽぽフィルムズ
日本語字幕:藤本エリ
字幕協力:堀 純司・国際有機農業映画祭
協賛:生活クラブ生活協同組合・パルシステム生活協同組合連合会・たねと食とひと@フォーラム
原題:MODIFIED ◇2017年/カナダ・米国・フランス 英語・仏語/87分/カラー
合同会社たんぽぽフィルムズ代表。中学卒業後に渡米し、十年滞在。大学では飲食店の経営学を学び、帰国後は食のマーケティングや宣伝を専門とする。国際有機農業映画祭運営やドキュメンタリー界の先駆者・小泉修吉氏のスタッフを経て、2018年に『たねと私の旅』の日本での独占配給権を取得し、配給レーベルたんぽぽフィルムズを設立。たねと食とひと@フォーラム運営委員。
「多少なりとも食べ物を自分で作り、それを子どもに食べさせたい」と語る藤本さん、その姿はドキュメンタリー映画『たねと私の旅』に登場する監督のお母さんに通じるものがあります。
◆「食べる・食べない」ではなく、種を守るという視点
これまで種に関するドキュメンタリー映画の上映交渉や字幕の翻訳をしてきましたが、遺伝子組み換え作物を「食べても安全か」という健康面の問題点で語るものが多く、私はそこにずっと違和感を抱いていました。
そんな中、ジェーン・グドール博士の著書『健やかな食卓』に出会い、博士が遺伝子組み換え作物を環境問題として捉えていることに深く共感しました。未知の遺伝子組み換え作物が自然界で交雑したとき、何が起こるかは誰にもわからない、このままでは環境が守られない、その危険性を持っていることが遺伝子組み換え作物の問題なんだと腑に落ちたのです。
だから、『たねと私の旅』が「食べる・食べない」の健康面ではなく、「種を守ること」に視点を当てていることに強く共感しました。この映画はまさに私の思いを言い表していると感じたのです。
◆黄色い豆のスープに込められた記憶
印象的だったのが、ケベック州の伝統料理に使われる黄色い豆(黄色のえんどう豆)のエピソードです。これは映画の中ではなく、監督から直接聞いた話です。
監督のお母さんにとって、黄色い豆のスープは「家族に伝わってきた味」。その豆が手に入らなくなったとき、お母さんは在来種のたね屋さんで種を探し出し、栽培し、種採りをし、翌年に蒔く種を残しながらつないでいったそうです。 映画では、スープを作る様子や種採りをしている場面が映し出されていて、種を守る営みの大切さが静かに、力強く伝わってきます。
◆「選ぶ自由」が奪われている現実
監督が強く問題提起しているのが、映画の製作当時、カナダやアメリカでは遺伝子組み換え食品の表示制度がないという事実です(現在は表示制度あり)。買う自由はあるのに、消費者として選択する自由がない、消費者が選択するための情報が与えられていない現状は日本も同様で、私も同じもどかしさを覚えました。
日本は、2023年4月に遺伝子組み換えの表示の基準が変わり、これまで消費者が選ぶ基準としていた「遺伝子組み換えでない」という表記は消えつつあります。消費者が望む選択をするための情報は、基準の改正によりむしろ悪化しているのです。
◆監督との信頼関係の中で
最初は国際有機農業映画祭での上映交渉から始まりました。監督は継続的な上映を望んでいたため、「私がこのまま続けて上映します」と話したら、映画祭でも上映できることになりました。もともと私には「いい映画と出会えたら、配給したい」という思いがあったので自然な流れでした。
映画に対する思いや上映と一緒にできるたくさんの企画を書いて送りました。この映画には料理のシーンがたくさん登場します。料理付きの上映会の企画には「楽しそう」と言ってくれ、自主上映にしたいという提案も大いに賛成してくれました。これらのやり取りの中で監督は私に多くの信頼を寄せてくれました。
◆わたしたちは種そのものを食べている
映画のチラシに「わたしたちは種そのものを食べている」という言葉を添えました。米も麦も、もとは種。種は私たちの生きる源、種の問題は農家だけのものではなく私たち一人ひとりの問題なのです。
◆私たちの選択が未来を変える
私は横浜市から長野県東御市へ移住し、野菜を作り始め、昨年から米作りにも挑戦しています。自給は簡単ではありません。手間がかかり、天候にも左右され、思い通りにいかないことばかり。でも、それを知ることが大切なのです。食べ物をつくる大変さを子どもが早くから知っていることもいいことだと思います。食べ物の価値や価格の意味が見えてきます。
映画の中で心に残った言葉があります。お母さんの言葉「料理は種から始まる」。グドール博士の言葉「希望を持てること」。博士は「私たちの選択が未来を変える」ということを言っているのです。
一人の選択では何も変わらないと思われがちですが、そんなことはありません。国産米を選ぶか、輸入米を選ぶか、それだけでも未来は変わります。日々食べているものをただ口にするだけでなく、それはどこから来たものか、どういうものを食べているのか、暮らしの中で選ぶということをこの映画を通して考えていただきたいと思います。
インタビュー番外編 その① ◆たんぽぽフィルムズのたんぽぽは?
たんぽぽの種って風に舞って自由に行くし誰からも愛される花です。根は漢方の薬にもなります。根が残っていれば次の年、そこからまた生えてくる渋とさもあるんです。
インタビュー番外編 その② ◆映画に出てくる料理を作られましたか?
イエローピーのスープとババ・オウ・ラムを作りました。ババ・オウ・ラムはアルコールが強いのですが、すごくおいしかったです。
インタビュー番外編 その③ ◆お米つくりはどうでしたか?
自給自足のカフェの店主から土地を借り、小さな田んぼを始めました。日本政府は農業の大規模化を推進していますが、中山間部が多い日本では農業の効率化が難しく、現実的ではありません。日本の自給率を上げるためには、小規模農家が潤う仕組みにしないと自給率は上がらないと実感しました。
*ジェーン・グドール博士(1934~2025)イギリスの動物行動学者。チンパンジー研究の世界的権威、熱心な環境保護活動家としても知られています。この映画にも出演しています。たくさんの著作あり。
*ケベック州はカナダの中でもフランス文化を持っている地域でフランスの食文化を受け継いだものが主体、カナダで最も食文化が発達している州。
以上




