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2016年3月16日 米国・食品安全センター(Center for Food Safety)

勝利!遺伝子組み換え食品表示を阻もうとする最近の産業界の努力が上院で敗れた 

「ダーク法案」の敗北はアメリカにおける知る権利の大勝利

今日、「アメリカ人の知る権利を否定する法案」(ダーク法案*1)は、49対48で討論終結に必要な票*2を獲得することに失敗し、事実上法案は敗れた。この法案はロバーツ議員(共和党、カンザス州)によって提出されていたが、超党派の拒否にあった。この法案の提出以前に、バーモント州、コネティカット州、メーン州、アラスカ州では遺伝子組み換え(以下「GM」)食品表示法が成立*3していた。ダーク法案が成立したあかつきにはGM食品が入っている場合には消費者にそのことを知らせる手段として主にQRコード*4、ウェブサイト、電話によるとする自主的表示の仕組みが立てられるはずであった。

*1:通称Deny Americans the Right to Knowのイニシャルの略。米国上院に上程された。

*2:米国上院の議員総数は100人。過半数(51票)で可決となるが、60人の賛成がなければ採決に入れない。

*3:GM食品に義務表示を課す州法。バーモント州は2016年7月施行。コネティカット州・メーン州は、周辺州の状況を見て施行(時期未定)。アラスカ州はGM魚介類のみ対象に2005年制定。

*4:2次元バーコードのこと。

「ダーク法案の敗北は、食品表示運動とアメリカの知る権利の大勝利だ」と、食品安全センター(CFS)執行役員のアンドリュー・キンブレルは言う。「それはまた、自分たちが買い自分の家族に食べさせる食品について、アメリカ人を暗闇においておこうとする企業利益の企みに対する民主主義の重要な勝利でもある」とキンブレルは述べている。

アメリカ人の64%しかスマートフォンを持っていない。ということは、1/3以上のアメリカ人がこのような表示の代替形態を使えないということだ。しかも予想されるとおり、取り残される者たちは貧しい者たちや都市ではない地域に住んでいる者たちに偏っている。ピュー研究所によると、低収入の人々のうち50%しかスマートフォンを持たず、地方に住む人々のうち52%しかスマートフォンを持っていない。そしてスマートフォンを持っている人々でも、インターネットへの恒常的なアクセスを保証されているわけではないし、さらにその中でももっと少数の人しかQRコードを使ったことがない―20%以下である。スマートフォンやデータ・プランは高価であり、スマートフォンを持っていたことのある人々のうちほとんど半分が、経済的困難のためある時点でそのサービスを停止したことがある。

*:タブレット専用の超高速通信の料金体系。

CFSはすべての上院議員に手紙を送り、ロバーツ氏の法案が低収入のアメリカ人や地方のアメリカ人、マイノリティや高齢者に対して、これらのグループの大半がスマートフォンさえ持っていない以上、差別的であることを指摘した。それに合わせて、CFSが上院に対して提供した法的分析は、その法案が違憲である可能性があり、法の下での平等な保護を侵害する可能性があると示した。そのCFSの手紙には、電話したりQRコードを調べたりして、買おうとするすべての製品をチェックする時間のある消費者などいないだろうことを指摘した。また、この法案は事実上、表示法案の見かけを装った非表示法案だということを指摘した。この法案は消費者のプライバシーに関する重大な問題を提起するものでもあった。

「QRコードの表示は貧しい者、マイノリティ、地方住民、高齢者を差別している。それは、明確で簡潔に記述されたパッケージ上の表示の代替としてはまったく受け入れがたいものである」とキンブレルは言う。「知る権利はすべての人のための権利であって、一部の余裕のある者たちだけのものではない」。

バーモント州のGM表示法が2016年7月1日に施行されるが、大きな食品業界やバイオテクノロジー業界は、裁判を通じても議会においてもその実行を阻止しようと動いてきた。これらの産業は数か月の間、各州がGM表示法を通すのを先んじて阻止する議会対策を模索してきた。表示を支持する者たちがダーク法案と呼ぶ法案は、昨夏に下院を通過していた。

GM表示義務化への反対派は、しばしば自分たちの論拠として食品コストがかなり高くなる点を挙げる。しかし彼らが参照するものの大部分は、非GM原料に転換することによるコストを生産者が負うという想定に基づいている。この想定は誤りで、表示のコストとは等しくない。そのような動きがあるとしても、それは市場の圧力によるものであって表示の要求ではない。世界では64か国がGM食品表示を求めているが、その結果として食品コストが高くなったとは報告されていない。

1月にキャンベルは食料雑貨生産者組合を離脱した。この組合は長い間、GM食品表示義務化に反対しており、ワシントン州でのGM食品表示についての住民投票を阻止すべく数百万ドル規模のキャンペーンをしたことで、現在法的に検査されている。それに対してこの代表的なスープ会社は、消費者の利益のため、GM原料を含むすべての製品に表示すると宣言した。ニューヨーク・タイムズのインタビューでキャンベルの代表者は、「ラベルに栄養情報を記載するよう企業に求めた1990年の栄養表示教育法を採用したからといって、コストがかなり上がったわけではなかった」と指摘したのだった。

*:キャンベル・スープ・カンパニー(Campbell Soup Company)

新しい全国世論調査によると、圧倒的な大差でアメリカの有権者は、食品がGMの場合には消費者はそれを知る権利をもつべきだと言い、89%がGM表示義務化に賛成している。ほとんど同じくらいの消費者が、バーコードやその他の技術によるのではなく読みやすいかたちでの表示を望んでいる。30州以上が2013年から2014年にかけてGM表示を求める立法過程を開始し、最近バーモント州、コネティカット州、メーン州で法の成立をみた。

出典:Center for Food Safety (食品安全センター)から転載

(翻訳 高澤裕考)

4月6日修正

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