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 サナテックシード(株)は、2020年12月、国内初のゲノム編集技術応用食品(以下、ゲノム編集食品)としてGABA高蓄積トマト「シシリアンルージュハイギャバ」を厚生労働省に届け出、農林水産省には情報提供と飼料としての届け出をしました。この春には、5000名程度の希望者に家庭菜園用の苗を無償提供するとしています。たねと食とひと@フォーラムでは、3月1日(月)に運営委員2名で都内の虎ノ門にある本社を訪問し、代表である竹下達夫会長と竹下心平社長からお話を伺いました。


 GABA高蓄積トマト「シシリアンルージュハイギャバ」の届け出までには、長い準備期間があったそうです。2019年10月に、ゲノム編集作物の国内流通ルールが定められて以降も、関係省庁と1年以上かけて事前相談を重ねてきたとのこと。つくば大学との共同開発を決めてからは4年、つくば大学発のベンチャーとしての会社設立(2018年4月)からは2年8カ月が過ぎていました。この間、会長は「先駆者だからこそ、きちんとやらなくては」と自ら言い聞かせてやってこられたそうです。

サナテックシード(株)HPより

 「もちろん表示はします。ゲノム編集だからできた品種ですから」と、社長から、包材とシールを準備中のオリジナルマークを見せていただきました(右)。ただし、このトマトが市場流通するには、まだ時間がかかりそうです。

 サナテックシードでは、生産者に苗を販売することをめざしていますが、品種登録のための出願もこれからです(その後、苗を配布する前の2021年4月に出願済)。品種登録されれば、親世代の情報も公開されます。出願から登録までは、通常3年程度かかりますが、出願すれば、「品種登録出願中」と表示ができて、育成者権者の権利が守られることになります。知的財産権保護のため、タネの販売は今のところ考えておらず、また苗作りは海外を避けて国内で行うそうです。

 「社会実装はこれからです。まず生産者を確保しなくてはなりません。そして生産していただけるとしたら、消費者のニーズがあってこそです。消費者に理解していただき、社会に受け入れてもらえるかどうか、希望者には実際に家庭菜園で育てて食べていただき、さまざまな声をいただきたいと考えています」と、会長は苗の配付に踏み切った動機を話されました。「私は、戦後育ち。食べ物の大切さは身に沁みています。その食べ物で少しでも健康に生きられるとしたら、可能性を捨てるべきではないと思います。ゲノム編集食品への不安や反対の声があるのはわかっていますが、世の中の役に立つ技術だと思うから挑戦しています。押し付けはしません。選択肢のひとつとして、必要な人が選んで食べられるようになるのが良いのではないでしょうか」。

 今回、通常のトマトより含有量を高めることに成功したGABAは、血圧の上昇を抑え、ストレスを改善する作用があると言われている成分です。加熱しても効果は変わらないため、生食のほか、加熱調理にも向いています。工夫して、いろいろなレシピで試して欲しいとおっしゃっていました。会社としては、トマトジュースはもちろん、オリーブ漬などの加工品も考えてみたいということです。機能性表示食品としての届け出も見込んでいるものの、価格などはまだ決まっていないそうです。

以上

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