1月25日、農林水産省食料産業局食品製造課基準認証室宛てに「有機農産物の日本農林規格等の一部改正案」について、意見・質問を提出しました。
改正案は有機農産物、有機加工食品、有機飼料及び有機畜産物の日本農林規格について、ゲノム編集技術を用いて生産 されたものを使用できないことを明確にするため、定義する用語 「組換えDNA技術」を、「遺伝子操作・組換え技術」へ変更するというものです。
改正案について
国際ガイドラインである「有機的に生産される食品の生産、加工、表示及び販売に関するガイドライン」との整合性をとる必要性から、今般の有機JASの改正で組換えDNA技術以外の遺伝子操作技術の取り扱いを明確にされることは支持します。
しかし、責任を持って有機JAS農産物の信頼性を担保するためには、具体的な実行策の明示が必要です。
カルタヘナ法及び食品衛生法、食品表示法等では、ゲノム編集作物・食品の一部が届け出や表示の義務対象外となっています。外来遺伝子が残るか否かで、規制の対象か対象外かが決まることになりました。有機JASではプロセスベースで判断がなされるのに対し、一般食品に関してはプロダクトベースで判断がなされることになります。
遺伝子を人為的に操作・改変する上に、食経験に乏しいという意味では、ゲノム編集はこれまでの遺伝子組換えと同じです。痕跡が残らないことは安全の証明にはならず、不安は解消されるどころか、より大きくなるばかりです。
ゲノム編集でどのような危険な改変が行われたとしても、痕跡が残らないものは現時点では発見が困難とされています。開発者等の届け出によって提出された情報のみが頼りとなります。その開発者等の力量やモラルは様々で、信頼に値するかどうかわかりません。特にそれが海外の企業であった場合には、一般食品と有機JASでゲノム編集技術の取扱いに対する考え方に違いがあることが周知徹底されるのかどうか、また、遺伝子組換え同様に輸入原料段階でIPハンドリングが可能なのかどうか等、尚更心もとなさが募ります。
そのように、技術にも開発者等にも十分な信頼が持てない状況下において、有機JAS規格でゲノム編集を禁止するためには、国による明確でゆるぎない方策の提示が必要です。2001年4月の有機JAS制度の開始にあたっても、遺伝子組換え表示制度の開始と同時でした。本当に現実味のある規格とするためには、カルタヘナ法及び食品衛生法、食品表示法等関連する制度の速やかな整備が不可欠であると考えます。
ついては、懸念される以下の点について明確にすることが、制度改正の前提になります。下記質問にお答えください。
質問
① 認定機関がゲノム編集種子及び資材等の開発者、企業から速やかかつ正確な情報をどのように得るのか、それがどう担保されるのか、具体的にお示しください。
② ゲノム編集作物・食品を禁止するには、トレーサビリティを保障する制度の確立が必要と考えますが、具体的な方向性をお示しください。
③ 認定機関による年1回以上の検査による確認について、ゲノム編集作物ではないということを証明する方法を具体的にお示しください。
④ 国によるゲノム編集農作物・食品の分析方法及び管理監視体制について、お示しください。
⑤ 手順を遵守し登録認証機関の承認を受け、栽培出荷後にゲノム編集作物であることが発覚した場合、有機生産者・生産団体に対する救済方法について具体的な方策をお示しください。
以上