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 2019年10月10日、農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課 組換え体飼料担当宛に農水省「ゲノム編集飼料及び飼料添加物の飼料安全法上の取り扱い要領(案)」への意見を提出しました。

ゲノム編集の飼料安全法上の取り扱いへのたねと食とひと@フォーラム意見

ゲノム編集飼料及び飼料添加物の飼料安全法上の取り扱い要領(案)

関連資料 取り扱いについて

意見公募要領


ゲノム編集飼料及び飼料添加物の飼料安全法上の取り扱い要領(案)への意見

 はじめに

 飼料安全法は、「飼料及び飼料添加物の製造等に関する規制、飼料の公定規格の設定及びこれによる検定等を行うことにより、飼料の安全性の確保及び品質の改善を図り、もつて公共の安全の確保と畜産物等の生産の安定に寄与する」ための法律です。国民の食生活や畜産経営の規模拡大等の状況変化を背景に、飼料の品質確保に加えて飼料及び飼料添加物の安全性の確保が重要になってきたことを受けて改正されてきたものです。家畜はエサを選べません。また、畜産物は最終的には食品として人間の口に入ります。取扱い要領の検討にあたっては、法の趣旨を最大限尊重し、生産者の暮らしや食卓を囲む人々の安全・安心につながる家畜の健康への配慮を前提としてください。

1.定義について

 【意見】遺伝子を操作するバイオ技術を包括的にとらえた視点で、定義の見直しを求めます。

 【理由】ゲノム編集技術は、遺伝子を意図的に操作する点では組換えDNA技術と同じです。今回、一部だけを従来の組換えDNA技術と違うとすることには、違和感があります。ゲノム編集は、技術として世界でもまだ初期の段階です。流通の前に、飼料及び飼料添加物としても安全性を検証し、情報を公開した上で広く理解を求め、今後の技術の進展を見込んだ形で包括的に定義づけるべきです。他国に先駆けて拙速な社会実装を急ぐのではなく、リスク評価体系の確立を待つことが食料安全保障の観点からも重要です。

2.届出の対象となるゲノム編集飼料について

 【意見】予防原則に基づき、全てのゲノム編集飼料に届け出及び安全性の確認を義務付けてください。

 【理由】ゲノム編集技術はまだ初期段階にあり、予期しない結果について完全に予測できるわけではなく、想定外のアレルゲンや有害物質が産生される可能性があります。個々の応用分野においてもオフターゲット変異の評価体系は、国内外で未確立です。オンターゲットの変異で意図されない効果が生じる可能性も否定できません。

 十分な検証やリスク評価なしに飼料として市場に出回ってしまえば、異常タンパク質によって家畜の健康に影響及ぼし問題を引き起こすことも考えられます。飼料の安全性に重大な影響を及ぼしかねません。家畜への給餌経験の歴史がなく、長期にわたりゲノム編集飼料を摂取した家畜にどのような影響を及ぼすのか、また及ぼさないのかデータがありません。悪影響が生じる可能性が排除できない以上、予防原則に基づいた規制を整備する必要があります。

 流通が目前に迫っていることを背景に、家畜への給餌経験もなく安全性が確立されていないゲノム編集飼料及びゲノム編集飼料添加物を安全性確認の対象外とすることは本末転倒です。

 現在の日本では、飼料原料の大半は海外から輸入されています。大使館等を通じての周知が為されるとしても徹底されるかどうか不安が残るのみならず、任意の届け出制度には強制力がありません。海外の企業等が届け出なしに流通させることも合法となります。努力義務にすぎない点で、情報の蓄積という面からも不利となります。

 開発が進められているゲノム編集による多収米を飼料用米として国内で栽培することになれば、環境や周囲の農地・作物への影響は免れません。飼料自給率アップと安定供給、水田フル活用(耕作放棄地対策)が名目だとしても、足元の地域産業への計り知れないダメージが不安です。生物多様性に富む田んぼや米作り文化を将来にわたって維持していくべき農水省の立場としては、本来なら官民に対して慎重な態度を提言するべきでしょう。

 2000年代初頭に発生したBSE牛海綿状脳症問題では汚染された飼料を摂取した牛などが牛海綿状脳症を発症し、畜産物を摂取した人への感染も確認されました。飼料が人への健康に影響を及ぼすことが分かっています。また、遺伝子組換え穀物の輸入港の周辺や輸送道路等で遺伝子組換え植物の自生が確認されています。農作物との交雑等との可能性も否定できません。

 遺伝子組換え飼料が「家畜に対する安全性」と、「人に対する安全性」の二つの観点から安全性の確認が行われていることに鑑み、ゲノム編集飼料についても同様の安全性の確認が必要と考えます。

 予防原則に則った厳しい基準づくりは、国民から信任されて政策や方針を決定する立場にある人々の社会的責任です。

3.届出の対象となるゲノム編集飼料添加物について

 【意見】予防原則に基づき、全てのゲノム編集飼料添加物に届け出及び安全性の確認手続を義務付けてください。

 【理由】ゲノム編集技術はまだ初期段階にあり、予期しない結果について完全に予測できるわけではなく、想定外のアレルゲンや有害物質が産生される可能性があります。個々の応用分野においてもオフターゲット変異の評価体系は、国内外で未確立です。オンターゲットの変異で意図されない効果が生じる可能性も否定できません。

 十分な検証やリスク評価なしに飼料として市場に出回ってしまえば、異常タンパク質によって家畜の健康に影響及ぼし問題を引き起こすことも考えられます。飼料の安全性に重大な影響を及ぼしかねません。家畜への給餌経験の歴史がなく、長期にわたりゲノム編集飼料を摂取した家畜にどのような影響を及ぼすのか、また及ぼさないのかデータがありません。悪影響が生じる可能性が排除できない以上、予防原則に基づいた規制を整備する必要があります。

 流通が目前に迫っていることを理由に、家畜への給餌経験もなく安全性が確立されていないゲノム編集飼料及びゲノム編集飼料添加物を安全性の確認対象外とすることは本末転倒です。

 現在の日本では、飼料添加物の原料の大半は海外から輸入されています。大使館等を通じての周知が為されるとしても徹底されるかどうか不安が残るのみならず、任意の届け出制度には強制力がありません。海外の企業等が届け出なしに流通させることも合法となります。努力義務にすぎない点で、情報の蓄積という面からも不利となります。

 2000年代初頭に発生したBSE牛海綿状脳症問題では汚染された飼料を摂取した牛などが牛海綿状脳症を発症し、畜産物を摂取した人への感染も確認されました。飼料が人への健康に影響を及ぼすことが分かっています。また、遺伝子組換え穀物の輸入港の周辺や輸送道路等で遺伝子組換え植物の自生が確認されています。農作物との交雑等との可能性も否定できません。

 遺伝子組換え飼料添加物が「家畜に対する安全性」と、「人に対する安全性」の二つの観点から安全性の確認が行われていることに鑑み、ゲノム編集飼料添加物についても同様の安全性の確認が必要と考えます。

 予防原則に則った厳しい基準づくりは、国民から信任されて政策や方針を決定する立場にある人々の社会的責任です。

4.届出等の方法について

 【意見】すべてのゲノム編集飼料及びゲノム編集飼料添加物について、開発者、その代理人、その他適切な資料を提出することができるものには、事前相談の段階から詳細な情報提供を義務付けてください。開発者等には、原則としてではなく、必ず上市前に一定の情報を届出ることを義務としてください。届出を受けた農林水産省は、遅滞なく必要な情報を公表してください。

 【理由】遺伝子を改変した作物によって問題が生じた場合、追跡や回収が困難です。被害拡大を防ぐためにも、遡って原因を究明し、責任を明らかにすることができるトレーサビリティの確立が必要です。

 科学的検証に加えて、届出情報、事前相談の内容、特許となっているゲノム編集ツールの購入履歴等を活用するなどの社会的検証を併用することで、実行可能性の幅は広がります。事業者の願いも、開発者の願いも、安全・安心な商品及びサービスが市場に供給され、被害に遭っても円滑に救済されることにあるはずです。EUなどの今後の対応を参考にすれば、対策は必ず見つかります。2017年9月1日に公布と同時に施行された改正食品表示基準で消費者庁は、加工食品に原料原産地表示を義務付けました。その裏付けは社会的検証(原料トレーサビリティ)です。

5.届出及び公表する情報について

 【意見】届出について、(1)ゲノム編集飼料⑥及び(2)ゲノム編集飼料添加物⑤の上市年月を上市後ではなく、上市予定年月と明記してください。関連資料によると、開発者に求めるデータに、国際的にも長年にわたって信頼確保のために使用されてきた安全性評価の実施基準であるGLPの有無は問わないとされていますが、免除するべきではありません。

 公表について、(3)ゲノム編集飼料⑥及び(4)ゲノム編集飼料添加物⑤の上市年月を届け出受理後(上市後)とあり、期限が書かれていません。上市と同時年月と明記してください。

 公表にあたって、市民の問合せに対し誠実に対応することと明記してください。

【理由】これまで実績の無いゲノム編集飼料及びゲノム編集飼料添加物です。正確な情報の収集と蓄積、信頼できる情報の提供を行う必要があります。

6.後代交配種の取扱いについて

 【意見】後代交配種についても、事前相談及び届出を義務付けてください。

 【理由】ゲノム編集技術は遺伝子組換え技術の次世代版として登場してきた新しいバイオテクノロジーでまだ初期の段階です。人類史上これまで経験のないものに対して、多くの市民が慎重になるのは当然です。家畜及び人の健康、環境に関わることであれば、なおさらです。新たな方法で遺伝子改変を施された飼料及び飼料添加物を摂取した家畜の畜産物は避けたいと考える消費者が多いのも実状です。ゲノム編集飼料及び飼料添加物に対して、厳格な取扱いが必要です。

7.その他について

 【意見】ゲノム編集飼料及び飼料添加物に関する利用の実績又は今後の科学的知見の充実、国際的動向を踏まえ必要に応じて見直しを行うことはもちろんですが、見直し以前の状況についても、広く情報開示が必要です。農林水産省のHPに、消費者や事業者、また海外からもアクセスしやすいゲノム編集飼料及び飼料添加物に関する情報を一元管理した専用ページを設けてください。通知に従わない事実については、当該開発者等の情報を、このページでも速やかに公表してください。

 【理由】ゲノム編集技術については、検知法を含め世界レベルで更なる技術開発の進展が見込まれています。それに合わせてたえず情報が更新されて速やかに公開されることが重要です。食品衛生法上の組換えDNA技術とは違うことから、「従来からの組換えDNA技術応用食品との関係について混乱を生じさせない」ためにも、組換えDNA技術とは別の専用ページが必要です。海外からの輸入も見込まれているので、その対応も国際的調和のためには必要です。

以上

 

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