アメリカ合衆国の粉ミルクに遺伝子組み換え作物による加工品が使われているという情報に触れ、日本の粉ミルクはどうなのかを調べることにしました。
国内の大手粉ミルクメーカー6社(株式会社明治、森永乳業株式会社、雪印メグミルク株式会社、雪印ビーンスターク株式会社、アサヒグループ食品株式会社(和光堂)、アイクレオ株式会社)に、粉ミルク及びフォローアップミルク等の原材料が非遺伝子組み換えかどうかの公開質問状を5月に送付し、6月には全6社より回答がありました。
結果として、遺伝子組み換え作物を原料とする加工品がすべてのメーカーで使われていることがわかりました。そこで、各メーカーに訪問や電話で追加取材をおこない、回答について確認し、遺伝子組み換えのものを使用せざるを得ない状況を聞き取りました。
現在、日本の国内では遺伝子組み換え作物の商業栽培は行われていません。しかし、遺伝子組み換え作物8つ(大豆・トウモロコシ・ナタネ・ばれいしょ・綿実・アルファルファ・てん菜・パパイヤ)は政府によって承認されており、アメリカ合衆国・ブラジル・アルゼンチン・インド・カナダなど海外から大量に輸入されています。また、それらを原料とする各種加工品も流通しています。このうち、粉ミルクに関係するのは、大豆・トウモロコシ・ナタネによる油脂や糖類です。
粉ミルクの原料の約70%は牛乳の加工品で、約30%が油脂成分および添加物等となっています。いずれも、母乳の成分に近づけるために使用されています。今回の調査では、油脂成分の一部や糖類の一部が、遺伝子組み換えの大豆・トウモロコシ・ナタネを原料として作られたもので、1社をのぞき、10年以上前から使用しているという回答でした。理由は「安定して調達できるようにするため」です。
私たちは、この結果を公表することで、乳幼児を子育て中の皆さんがどう思われるか、心配でした。そうでなくても、特に出産した方は自分の体調の変化に加え、すぐに泣く新生児への授乳等で夜も昼もない日が続き、不安でいっぱいなことでしょう。その他、それぞれの状況により多くの方が、母乳だけでなく粉ミルクを使用しているのが現実です。
厚生労働省は遺伝子組み換え食品(加工品)の安全性は確認されているとしていますが、遺伝子組み換えでないものを食べたくても、使用したくてもできない現状は変えていきたい、という思いで公表することにしました。そのためには、遺伝子組み換えでない大豆・トウモロコシ・ナタネの栽培を増やして、安定して供給できる市場にすることが必要です。また、消費者に情報が開示され、選択して購入できる明確な表示も必要です。さらに今後、米油など遺伝子組み換えを認めていない別の作物を原料とする加工品への切り替え等も、メーカーに検討いただければと考えます。
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粉ミルクメーカー調査結果一覧(2016年)
「粉ミルクの原材料についてメーカーに公開質問状(2016年)」
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この企画は地球環境基金の助成を受けて実施しました。