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2月16日に開催された第9回遺伝子組換え表示制度に関する検討会で議論された報告書素案について、その内容と懸念されることを以下に記します。

消費者庁は遺伝子組換え表示制度の見直しへ向け、2017年4月から2018年3月末までの予定で、有識者による「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」をスタートさせました。これは「食品表示一元化検討会」(2011年9月~12回開催)において、遺伝子組換え表示のあり方については検討すべき事項として位置づけられ、消費者基本計画(2015年3月閣議決定)においては実態を踏まえた検討を行うこととされたことによります。遺伝子組換え表示制度が導入されて16年が経過し初めての検討の場となりました。検討会は座長を湯川剛一郎委員(東京海洋大学教授)が努め、学識経験者、消費者団体や業界団体の関係者など10人で構成されています。

2001年に導入された現行の遺伝子組換え食品表示制度では、義務表示の対象はわずか8農産物33加工食品群に限られています。遺伝子組換え農作物及びそれに由来する原料から製造されていても、最終製品に加工される過程でタンパク質やDNAの成分が除かれてしまう多くの加工食品(食用油・醤油など)や、畜産における飼料は、義務表示の対象外で、生産者の任意に委ねられています。

このような場合、消費者が「遺伝子組換え食品は食べたくない」と考えても、「遺伝子組換え」という表示がないため判断できません。また、加工食品業界や畜産業界においては、消費者に明らかにされないまま、コストのかかる分別生産流通管理(以下、分別)された非遺伝子組換え原料から遺伝子組換え不分別のものに切り替える動きが加速しています。いずれも表示制度の欠陥によって生じている問題です。

  • 「遺伝子組換えでない」表示は混入0%に限定

第9回遺伝子組み換え表示に関する検討会に出された報告書素案では、義務表示の拡大はなく基本的に現行通りとし、任意表示である「遺伝子組換えでない」表示について厳格化するという方向性が打ち出されました。混入率が0%ではなく、実際には5%以下の意図せざる混入の可能性があるのに、「遺伝子組換えでない」という表示をするのは消費者の誤解を招くという消費者委員の意見を反映させた案です。

  • 「遺伝子組換えでない」表示の食品は激減?

この案が通った場合に予想されることを記します。現行制度では、義務表示の範囲が限定されているため、店頭で「遺伝子組換え」や「遺伝子組換え不分別」という表示をほとんど見かけません。このように義務表示の範囲を狭めたまま、任意の「遺伝子組換えでない」表示を混入率0%(検出下限以下)と厳格化した場合、「遺伝子組換えでない」と表示される食品は激減する恐れがあると思われます。

たとえば表示義務のある豆腐では、混入率5%以下まで分別された原材料から製造されている場合には、これまでなら「原材料:大豆(遺伝子組換えでない)」と表示できていました。ところが上の報告書素案に沿った新制度ができた場合には、それは「原材料:大豆」としか書けなくなります。これでは、原材料の大豆に95%以上の遺伝子組換えでないものを使っていても、そのことが消費者には伝わりません。

他方で、表示義務のない食用油、醤油、糖類などの場合は現行制度と変わりません。つまり遺伝子組換えの原材料を使用していても、「遺伝子組換え」や「遺伝子組換え不分別」と表示する必要はありません。遺伝子組換えでない原材料を分別して使っていても表示に反映できない一方で、表示義務のない食品では、ほとんどの原材料が遺伝子組換えであっても表示する必要がないわけです。このように、同じように表示が無い場合でも、意味が違ってきてしまいます。

  • 分別生産流通のシステムが無くなる可能性

そうなれば、遺伝子組換えでない原材料の分別を適切に実施してきた事業者にとって、その努力を消費者に伝える機会が失われることになります。それはまた消費行動にも影響を及ぼします。その結果、遺伝子組換えでない原料を調達するためのシステム自体が無くなくなる可能性も出てきます。

消費者は遺伝子組換え食品を避けられなくなるばかりか、遺伝子組換えでないものを選ぶ機会を失うことにもなります。

国産農産物については、いまのところ遺伝子組換えの栽培は行われていないため、遺伝子組換えでないと考えられますが、分析技術が進歩している現在、遺伝子組換えと非遺伝子組換え原料を使用している工場では、何らかの原因で微量でも混入した場合、組換えDNAが検出される可能性はあり、「遺伝子組換えでない」表示はできません。

また、プレミアム価格がついた高価な「遺伝子組換えでない」表示の食品と遺伝子組換え不分別の原料を使った食品の二極化も懸念されます。

  • 遺伝子組換えでない原料が分別生産流通されたことが分かる表示を新設

上の報告書素案が実現した場合には、以上のような結果が予想されることから、検討会では次のような対策が考えられています。それは、0%ではないが意図せざる混入率が5%以下に抑えられるよう分別されたものについては、分別が適切に行われていることが伝わり、消費者の誤認を招かないことを条件として、新しい表示方法を新設するというものです。

表示の事例として、「遺伝子組換えの原料の混入を防ぐため、分別流通されたとうもろこしで作ったコーングリッツを使用しています。」、「遺伝子組換え原料の混入を防ぐため分別管理が行われたもの」などが出されました。もしも、「5%以下遺伝子組換え混入の可能性あり」というような表示がされた場合、同じ意味であっても、消費者は遺伝子組換えが入っていると解釈し避けてしまうことになります。しかも、誤認を招くとされる「遺伝子組換えでないものを分別」や「遺伝子組換えでない」という表示はできません。

混入率α%~5%以下で新設される表示は、消費者が遺伝子組換えでない食品を選べるような、プロセスを重視した表示制度となることを望みます。

  • 全ての遺伝子組換え食品を対象とした義務表示を

たねと食とひと@フォーラムでは、遺伝子組換え原料を使った食品については全てに表示を義務づけるよう求めます。また、加工後に組換えDNA、由来タンパク質が検出されるかどうかという、いわゆる「科学的検証」のみを根拠とするのではなく、流通過程の各段階で「科学的検証」も織り込んだうえで分別生産流通管理証明書や規格契約書等を用いた、いわゆる「社会的検証」を根拠とすることを引き続き求めていきます。

見直された制度が施行される前に生産・流通・消費動向のシミュレーションを実施する等、慎重な検討がなされることを求めていきます。

たねと食とひと@フォーラム事務局長 西分千秋

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