遺伝子組み換え問題を知る・考えるためのポータルサイト
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2015年10月5日、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が「大筋合意」したとの発表がありました。2010年にTPP参加の意志を菅首相が表明して以来、遺伝子組み換え反対派の市民はTPPを警戒し続けてきました。TPPは「関税」や「非関税障壁」(貿易の妨げとなる各国の法律や制度)を取り払うことを柱とするものであり、典型的な「非関税障壁」である遺伝子組み換え表示も、アメリカによって撤廃を迫られることは確実と思われたからです。

安部首相がTPP交渉参加を正式に表明した後の2013年6月には、アメリカが日本の遺伝子組み換え表示を容認する、というニュースが流れました。日本政府も一貫して、「TPPによって遺伝子組み換えの表示がなくなることはない」と言い続けています。しかし、その言葉をそのまま信用することはできません。

GMO genetically modified food 3d concept

ひとつの根拠は2015年6月29日に成立したアメリカのTPA法(貿易促進権限法)です。

TPA法は、大統領や交渉担当者に、議会の要求に沿って交渉し、議会に説明責任を果たすことを要求する法律ですが、その農業貿易の(I)-(ii)項には、「不当な米国の市場参入機会の制限や米国の農業市場をゆがめるような諸手続を撤廃するためのルールを設定、強化、明確にする」それは「バイオ技術を含む新技術に影響を及ぼす、表示のような不当な貿易制限や商業上の要件を含む」と書かれています。

つまり遺伝子組み換えの「表示」を「不当な貿易制限」であると位置づけ、それを「撤廃するためのルール」をつくれ、と大統領や交渉担当者に要求しているわけです。

もうひとつの根拠は2015年10月5日に内閣官房TPP政府対策本部から発表された、「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要」です。http://organic-newsclip.info/log/2014/14020609-1.html

 

第7章.衛生植物検疫(SPS)措置の締めくくりの部分には、

「日本の制度変更が必要となる規定は設けられておらず、日本の食品の安全が脅かされるようなことはない」と書かれてはいますが、前半に

「WTO・SPS協定の内容を上回る規定として、締約国がWTO衛生植物検疫委員会の関連する指針並びに国際的な基準、指針及び 勧告を考慮することや各締約国のSPS措置に係る手続の透明性の向上に関する規定等がある」

とあるのが気になります。

WTO(世界貿易機関)は、自由貿易促進を主たる目的とする国際機関であり、現在の国際貿易はこのWTOの枠組みに基づいて行われていますが、このWTOがそもそも一般市民よりも貿易によって利益をあげたい企業の側に有利な協定となっています。それを「上回る規定」がある、ということは現状よりもさらに、企業に有利なように貿易の規則が変更されてしまう可能性があるということを意味しています。

「透明性」という言葉も曲者です。一般の人々はこの言葉から、政府や企業が不正をしないように、外部の人がきちんと見張ることができるような状態をイメージするでしょう。しかし、TPP推進論者にとっての「透明性」とは、政府がやろうとしていることを企業がチェックし、自分たちの利益になるように口出しし誘導できる権利を指しているのです。

「透明性が向上する」ということは、すなわち企業が政府のやることに口出しし、自社利益を確しやすくなるしくみが設けられる、と解釈できます。

わかりやすく言えば、TPP発効と同時に遺伝子組み換え表示がなくなることはないが、発効後に企業の介入によって法制度の変更がなされ、将来的には遺伝子組み換え表示がなくなる可能性がある、ということです。

また、第8章.貿易の技術的障害(TBT)の締めくくりには「遺伝子組換え食品表示を含め、食品の表示要件に関する日本の制度の変更が必要となる規定は設けられていない」と書かれていますが、やはりその前が問題です。

「強制規格、任意規格及び適合性評価手続の導入に際し、他の締約国の利害関係者の参加及び意見提出の機会を与えること、国際規格に適合的な措置であっても貿易に著しい影響を与える場合はWTOに通報すること、WTO通報と同時に締約国に 当該通報及び提案を電子的に送付すること等を規定している」

強制規格というのは法律に基づいて守ることが義務付けられている規格のこと。遺伝子組み換え食品の表示もこれに当たります。つまり、表示制度を今よりも厳格に変更しようと思ったら、他の締約国(=アメリカ)の利害関係者(農務省、モンサント社などのアグリビジネス企業)の参加及び意見提出の機会を与えなければならない、ということです。

遺伝子組み換え種子を販売するモンサント社が、彼らの売り上げに大打撃を与えるであろう「すべての遺伝子組み換え食品の表示義務化」を許すはずなどありません。TPPがもし発効したら「すべての遺伝子組み換え食品に表示を」と求める消費者の声は、彼らの巨大な権力によって押しつぶされてしまうことでしょう。

つまり、TPPがもし発効すると、遺伝子組み換え表示を今以上に厳格化することは事実上不可能になると考えられます。

現状からの改革を不可能にする、こんな協定を許してはなりません。

安田美絵@ルナ・オーガニック・インスティテュート(マクロビオティック・ベースの自然食料理教室&持続可能な食の学校

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