遺伝子組み換え問題を知る・考えるためのポータルサイト
Tanet(たねっと)は、たねと食とひと@フォーラムが運営するウェブサイトです。

前回記事をupしてから1週間が過ぎた。この間事態は進展していたのだが、さまざまな事情があって続きをupするタイミングを逸してしまい申し訳ない。続けることにする。

 

ここで、日本のTPPに対する交渉姿勢を、少し遡って振り返ってみよう。

 

2月22日からのシンガポールTPP閣僚級会合直前の2月20日に日本農業新聞の解説記事が全体を見通しているので、それをご覧いただきたい。

 

⇒日本農業新聞2月20日『TPP日米協議が重大局面 主張の根拠にずれ』

http://image.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26067

 

ここにあるように、そもそも日米間では交渉の根拠となるものが異なっていることを記事は解説している。日本は昨年2月の日米共同声明を、米国は2011年11月の「TPPの輪郭」を根拠にしているので議論が噛み合わない。しかし、このことは事前にじゅうぶんわかっていたことだ。それでは、シンガポール会合で日本がとった交渉姿勢はどのようなものだったのか。ここでも日本農業新聞に秀逸な記事があるので、ご覧いただきたい。

 

⇒日本農業新聞2月25日『重要品目の確保優先 米国関心「自動車」後回し 日本政府』

http://image.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26157

 

ここで日本は「自動車を人質に取る形で、重要品目を守る」作戦に出た。日本の農業重要品目での聖域確保で米国の譲歩を得られるまでは、米国の関心項目である自動車協議に入らないとしたのだ。

 

しかし、米国は譲歩せず交渉は膠着した。この時点までは日本はギリギリ衆参農水委決議を守る姿勢だった。後述するが、この時点がターニングポイントとなった。

 

このシンガポール閣僚級会合の報告を兼ねた業界団体への説明会を、3月5日に政府は政府TPP対策本部主催で開催した。そこで内閣府の渋谷和久審議官は、甘利担当相とフロマンUSTRとの間で、日米協議の協議方法について合意をみたと報告している。その協議方法とは日米双方とも実務者(事務方=交渉官)に権限を持たせて協議を進めて行き、最終段階になって閣僚協議を開き合意していくというものだった。「閣僚協議は記念撮影のようなもの」(甘利担当相)というコメントを紹介していた。この部分は意外と重要である。

 

一方、このシンガポール閣僚級会合開催中に、別の動きをする人がいた。政府ではなく、自民党のTPP対策委員長の西川公也氏である。読売新聞5月4日4面の『検証TPP③』記事によると、シンガポール閣僚級会合のさ中の2月24日に、会場となったホテルの一室で、西川氏とオーストラリアのロブ貿易・投資相と会談していたとしている。記事は西川氏の調整が功を奏し日豪EPA交渉が急展開し4月7日に合意に至った背景を解説している。

 

当時、日本農業新聞も報じているので参考までにご覧いただきたい。

 

⇒日本農業新聞2月25日『日豪EPA 合意日程4月に照準 牛肉関税具体化も 豪貿易相が自民・西川氏と会談』

http://image.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26156

 

自民党の農水族議員関係の観測筋によると、膠着する日米協議を尻目に、西川氏は「肉を斬らせて骨を断つ」という表現を使って、日豪EPA交渉を進めることで、日米協議で米国の譲歩を引き出す作戦だと豪語していたという。しかし、本当にそういう作戦だったのだろうか。

 

いずれにせよ、日豪EPAは4月7日に大筋合意に至った。問題は内容である。なお、7月に安倍首相がオーストラリアを訪問してそこで正式合意に至るとされている。

 

マスメディアは日豪EPA大筋合意を、専ら牛肉関税の段階的半減を焦点にして解説している。その牛肉関税半減に関しては、以下の記事がまとまっている。

 

⇒日本農業新聞5月1日『[日豪EPA大筋合意 どうなる重要品目 1] 牛肉 低関税輸入枠で対応』

http://image.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=27455

 

ここにあるように、段階的に牛肉関税は引き下げられ最終的には半減するが、同時にセーフガードを設けているので、事実上の関税割当(低関税輸入枠)である。確かにセーフガードの発動条件を厳しくすれば、その通りではある。

 

しかし、この日豪EPA大筋合意は06年12月に全会一致で決議した衆参農水委決議に反していることは言うまでもない。TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会が4月16日に声明を出している。

 

⇒TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会『日豪経済連携協定(EPA)の大筋合意に関する声明』

http://atpp.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/epa-56f8-1.html

 

ところで、大筋合意は牛肉関税についてだけになされたのではない。この記事は連載記事の1回目のもので、全体で5回の連載になっている。2回目以降はチーズ、米・砂糖・小麦、豚肉、オレンジとなっている。さらに、そればかりでもない。

 

農林水産省は、HP上で逐次農林水産物の日豪EPA大筋合意の内容をプレスリリースしている。以下にリンクを貼っておく。

 

⇒日豪EPA大筋合意について

http://www.maff.go.jp/j/press/kokusai/renkei/140407.html

⇒畜産物関係

http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/c_shokuniku/140417.html

⇒水産物関係

http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kakou/140418.html

⇒農産物関係

http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/kikaku/140418.html

⇒林産物関係

http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/boutai/140422.html

⇒加工食品関係

http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/seizo/140422.html

 

これらの中で、即時関税撤廃になるもの、段階的関税撤廃になるもの、季節を限定して段階的関税撤廃になるもの、現在低関税枠ではあるが、枠は維持し枠内の関税を段階的撤廃になるものを合わせると、つまり即時かどうかはともかく関税撤廃になるものは195品目以上になる。これはマスメディアの記事にはほとんど載っていない。

 

たとえばイ草は7年でかけて段階的に関税撤廃になり、畳表やイ草製品は4年で関税撤廃になるが、岡山県や熊本県の生産者は把握しているだろうか。

 

この他、再協議を予定しているもの、関税が削減になるもの、関税割当の数量を段階的に引き上げていくものもある。これら全体を見渡していくとおぼろげながら、交渉の駆け引きが見えてくる。

 

つまり、再協議つきの除外・関税削減・関税撤廃・セーフガード・関税割当・低関税輸入枠などあらゆる手段を用いて重要5品目を含む農林水産物全体を対象に交渉が行われ、大筋合意に至ったのである。マスメディアは牛肉関税ばかりを報道していたが、当たり前だが牛肉以外の関税交渉も同時に行われていたのだ。

 

ところで前回の記事後段に日米協議の内容について米「インサイドUSトレード」誌の記事を引用したが、ここでわかりやすく意訳し直してみると以下のようになる。

 

「農産物重要品目を極力市場開放するため日米は可能な選択肢を挙げて協議をすることとした。現在考慮中の方程式(パラメーター)は、関税撤廃もしくは関税引き下げ、関税撤廃もしくは最終的な引き下げまでの期間、関税割当制度(低関税枠)、セーフガードなどである」。

 

つまり日豪EPAもTPP日米協議も同じような交渉をしていることに気付かされる。

 

日本が農水委決議をギリギリ守る交渉をしていたのは上述のように2月シンガポール会合までであったことがわかる。そこで新たに協議の手法で日米合意し転換を図ったのである。同時に自民党の西川氏がオーストラリアと「調整」に入った。これは読売新聞が「武勇伝」として伝えるようなものだったかどうか。個人の判断の筈はないだろう。

 

むしろこう解釈できないだろうか。上段で「意外と重要だ」と書いたように、日米で協議の方式を合意していた。3月5日の渋谷審議官の説明によるとこの合意はいったん18日になされていたから、西川・ロブ会談の前。さらに18日以降、再び決裂したが最終的には24日夜に合意したという。つまり日豪EPA交渉も日米協議も、日本の農産物市場開放の目的で同じ方式で協議・交渉していたのではないだろうか。(つづく)

運営団体について

たねと食とひと@フォーラム

住所:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-21
ちよだプラットフォームスクエア1342
電話:03-6869-7206
FAX:03-6869-7204
E-mail:info@nongmseed.jp

当会についての詳細
運営規約

Tweet