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2017年6月8日、松野博一文部科学大臣、山本有二農林水産大臣、山本公一環境大臣、塩崎恭久厚生労働大臣、松本純内閣府消費者問題担当大臣、岡村和美消費者庁長官宛てに、ゲノム編集、エピゲノム編集などの「新育種技術」の規制枠組みを要求する意見書を提出しました。

「新育種技術」の規制枠組みを要求する意見書

 

「新育種技術」の規制枠組みを要求する意見書

たねと食とひと@フォーラムは、国に新育種技術に対する早急な規制対応を求めます。

ゲノム編集、エピゲノム編集などの「新育種技術[New Plant Breeding Techniques]」の研究開発が進んでいます。遺伝子組換え技術による育種は1994年の米国での商業化以降、各国で規制が整備されてきましたが、最終産物に外部から導入した遺伝子を残さないことも可能な新育種技術が現行の規制に該当するのかどうか、現在世界的に議論されています。

遺伝子組換え技術による育種についての現在の日本の制度は次のようなものです。

第一に、環境に与える影響は遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(通称「カルタヘナ法」)、第二に食品や飼料としての安全性に関しては食品衛生法、食品安全基本法、飼料安全法、遺伝子組換え作物に関する詳細を定める厚生省告示、第三に表示の仕組みに関しては食品表示基準がその根拠となっています。

規制や表示の対象に何が含まれるかは、「遺伝子組換え生物」「組換えDNA技術」といった言葉がどう定義されるかにかかっています。上に挙げた規制や表示の根拠のうち、こうした言葉の定義を含むのはカルタヘナ法第二条第二項、平成12年厚生省告示第233号、内閣府令第十号(食品表示基準)です(下の引用を参照)。

私たちは、現行の定義が新育種技術を明確にカバーするものとなっていないことに強い懸念を覚えます。現行の定義は、主に宿主細胞外において遺伝子を組換えること、異なる種にまたがって新しい遺伝子の組み合わせを作ることを想定しているように見えます。しかし例えばCRISPR/Casを使えば、外部からの遺伝子挿入をせずに遺伝子配列を改変できます。例えば2017年に承認されたイネの第一種使用[1]は、Cas9DNAをイネゲノムに組み込んでいたため現行規制に沿った手続きの対象となりました。しかし近年、Cas9タンパク質とガイドRNAを導入した遺伝子改変が可能となりつつあります。また実際にエピゲノム編集技術では、外部からの遺伝子導入を経ない遺伝子改変技術が実現しています[2]。この場合にはカルタヘナ法で定める遺伝子組換えの定義から外れてしまいます。ニュージーランドのように、新育種技術も含むよう遺伝子組換え技術の定義を見直すべきです。

問題は、新育種技術を想定した規制枠組みが存在しない中で開発、実験がなされようとしていることです。審査を経ることなく野外試験を行なえば、周辺住民や環境に影響を及ぼすことが予想されます。隔離圃場での実験であっても、遺伝子改変の痕跡のない対象植物が万一拡散した場合には追跡の方途がなく責任を問うことができません。そもそも従来の遺伝子組換え技術を想定したカルタヘナ法に基づいて、従来の技術より幅の広い新育種技術の野外試験の可否を評価・判断することは、正当ではありません。

また新育種技術が外来遺伝子の導入を必要としないからといって、その産物が環境や人体に安全であるとはかぎりません。事実、ゲノム編集に関してオフ・ターゲット変異の可能性が指摘されていますが、その評価に関するルールがありません。また、オン・ターゲットの変異であっても意図されない効果が生じる可能性もあります。こうした点についての十分な検証なしに野外栽培を認めれば、環境との相互作用によって生物多様性に重大な影響を及ぼしかねません。

さらに食品として市場に出回ってしまえば、異常タンパク質によってアレルギーなどの問題を引き起こすことも考えられます。外来遺伝子を含まない作物によってこのような問題が起こった場合、責任をもって追跡や回収を行うことができません。取り返しのつかない悪影響が生じる可能性が排除できない以上、環境への影響に関してと同じく食品としての安全性に関しても、予防原則に基づいた規制枠組みを整備する必要があります。

また、遺伝子改変を施された食品は避けたいという消費者も多いのが実状です。生物多様性への影響、食品としての安全性の審査とは別に、食品に関しては消費者の知る権利を確保するための表示の仕組みや、問題が生じた場合に備えたトレーサビリティの確保が必要です。

新育種技術に関する規制枠組みを早急に整えないことには、日本の食の安全と安心、また生物多様性の保全が脅かされることになりかねません。消費者、生産者の見地から、私たちは国に新育種技術に関する早急な規制対応を求めます。

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【遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法】

「第二条 2  この法律において「遺伝子組換え生物等」とは、次に掲げる技術の利用により得られた核酸又はその複製物を有する生物をいう。

一  細胞外において核酸を加工する技術であって主務省令で定めるもの

二  異なる分類学上の科に属する生物の細胞を融合する技術であって主務省令で定めるもの」

【平成12年厚生省告示第233号(組換えDNA技術応用食品、添加物の安全性審査の手続)】

「(定義)

第2条 この告示で「組換えDNA技術」とは、酵素等を用いた切断及び再結合の操作によって、DNAをつなぎ合わせた組換えDNA分子を作製し、それを生細胞に移入し、かつ、増殖させる技術をいう。ただし、つぎのいずれかに該当することが明らかであるものを作製する技術を除く。

一 最終的に宿主(組換えDNA技術において、DNAが移入される生細胞をいう。以下同じ。)に導入されたDNAが、当該宿主と分類学上同一の種に属する微生物のDNAのみであること。

二 組換え体(組換えDNAを含む宿主をいう。)が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成であること。」

【内閣府令第十号 食品表示基準】

「第二条

十三 組換えDNA技術 酵素等を用いた切断及び再結合の操作によって、DNAをつなぎ合わせた組換えDNAを作製し、それを生細胞に移入し、かつ、増殖させる技術をいう。」

以上


[1] http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000891&Mode=2 (2017年5月30日アクセス)

[2] http://www.hirosaki-u.ac.jp/26901.html (2017年5月30日アクセス)

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