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2014年4月23日、アメリカ、バーモント州議会は、遺伝子組換え作物を使った食品に表示を義務付ける法案を可決しました。この事件を報じるニューヨークタイムズの記事をまずは翻訳してご紹介します。

「バーモント州、遺伝子組換え表示義務化へ
ニューヨークタイムズ 2014年4月23日 byステファニー・ストーム

他のどの州よりも早く、バーモント州は水曜日(2014.4.23)に、遺伝子組換えの原料を含む食品への表示を必須とする法律を通過させた。

国の人口の中心地から遠い小さな州の動きではあるものの、こうした表示を支持する人々は、ただちに法案の承認を歓迎し、重要な勝利として受け止めている。表示への努力は他の約20の州でも進行中であり、バイテク業界や食品産業はそうした動きに先回りするような連邦法を成立させようとしている。

『これは人々の知る権利にとって、歴史的な日だ』バーモント州の立法の草案づくりを手伝ったアドボカシ―グループであるセンター・フォー・フード・セイフティの事務局長、アンドリュー・キンブレル氏は声明の中で述べた。

法案に関する留保を表明していたピーター・シュムリン知事は、議決の後、法案にサインすると述べた。

『この常識的な法の制定をダメにしようと画策する連中がいることに疑いの余地はない』と彼は声明の中で述べた。『しかしこの法案は正しいとわたしは信じているし、ここバーモントでの我々の活動が、他の場所での運動に弾みをつけると思う』彼は早くから反対勢力が国に働きかけて法律を無効にしようとするであろうことを予測していた。

水曜日(4.23)の州議会での投票は、114対30であり、先週は上院での承認を受けている。この法律は2016年7月1日から施行される。

90%を超える米国のコーン、大豆、なたね、てんさい(米国の砂糖の大半はそこからつくられる)は、遺伝子組換えのタネから育つ。食料品製造者協会は、食料品店で売られている食品の80%が遺伝子組換え作物原料を含んでいると見積もっている。

コネティカット州は、昨年6月に表示を必須とする法律を通過させたが、その法律はいくつかの条件に左右されるものだった。メイン州が昨年通過させた法律もそれと似たものだった。コネティカットでは表示義務化は直ちに実効力をもたず、最低でも他の4つの州(そしてそのうちのひとつは隣接する州)が、同様の表示義務化を行うこと、そしてそれらの州の合計人口が最低2千万人を超えることが施行の条件とされた。

国勢調査によれば、バーモント州の人口は約62万6千人。よって食品会社は大きな収入減を被ることなくこの州への食品供給をストップできる。

大規模食品製造会社や遺伝子組換え種子を製造するバイテク産業は、遺伝子組換え(GMO)の原材料を含む製品に表示を義務付けることは、ドクロと交差した骨のマークをつけるのに等しいと主張している。

また、それぞれの州がばらばらな表示ルールを定めることによって、食品会社の包装や製造過程が複雑化させられるのではないか、ということも彼らは恐れている。

『遺伝子組み換え作物を含む食品に表示を要求するいかなる法律も、農民、食品製造業者、流通業者、食品小売業者、そして消費者に、余分な出費をかけることになるだろう』と、バイテク通商グループ、BIOのスポークスマンであるカレン・バトラは言う。『今日通過した法案は特に問題だ、なぜならばバーモントの市民になんら利益がなく、もっぱら余分な負担をかけるものなのだから』」

出典:

http://www.nytimes.com/2014/04/24/business/vermont-will-require-labeling-of-genetically-altered-foods.html?_r=0

この記事の中で「他のどの州よりも早くバーモント州が」と書かれていることからもわかるとおり、アメリカでは、遺伝子組換え食品の表示義務が今まで一切ありませんでした。

では、アメリカ人は遺伝子組換え食品の危険性を気にしておらず、安全だと信じているのかというと、決してそうではありません。アメリカでもアンケートを取ると、ほとんどの人ができれば遺伝子組換え食品を食べたくないと思っている、という結果が出るといいます。

それでもまったく表示義務がなかったのは、アメリカが国策として遺伝子組換え産業を推進してきたこと、そうした企業と政府の間に癒着があるため、政府が国民の側に立った施策をほどこさないことが理由です。

遺伝子組換えの表示を求める市民の声は年々高まり、2012年にはカリフォルニア州で、住民投票が行われました。

数か月前のアンケートでは90%の人が法案を支持していたにも関わらず、結果は僅差で否決でした。法案を通すまいとする食品企業やバイテク企業が莫大な宣伝費をかけ、30分に1回のテレビコマーシャルを流し、表示を推進しようとする側があたかも悪者であるかのようなイメージをふりまき、また「表示をすると食品価格が上がります」と宣伝したためです。NYタイムズの記事の中にもそうした業界の主張を見ることができます。

2013年にはワシントン州で同様の住民投票が行われましたが、またしても業界のコマーシャル攻勢に勝てず、表示義務化は否決されています。

どちらの州でも住民投票が終わり、コマーシャルも流されなくなってからまたアンケートを取ると、表示義務化に賛成のほうが多数を占めるという、なんとももどかしい状況です。

また、コネティカット州、メイン州が、他の州も表示義務化法案を可決したら自分たちの州でも施行する、としたのは、自分たちの州だけ表示を義務化することで、巨大な権力を持つ遺伝子組換え企業や食品企業から裁判で訴えられたりすると困る、という保身から出た発想だと見られています。「赤信号、みんなで渡ればこわくない」のようなものですが、これは赤信号を渡るようなルール違反の話ではなく、消費者としての当然の権利を主張しているだけなのですから、勇気をもって正々堂々と、付帯条件などなしに、表示義務化をしてほしいところでした。

今、やっとアメリカで初めて、表示義務化を可決した州が現れたことは、非常に画期的で喜ばしいことです。

次にバーモント州の法律の具体的な中身を見てみましょう。

○包装された生鮮農産品の場合:製造者は小売の包装に「遺伝子組換えによって生産された」とはっきり目立つように表示しなければならない

○包装されていない生鮮農産品の場合:小売業者は小売店の棚や商品が入っている容器に「遺伝子組換えによって生産された」とはっきり目立つように表示しなければならない

○1種類または複数種類の遺伝子組換え作物を含む加工食品の場合:「部分的に遺伝子組換えによって製造された」または「遺伝子組換えによって製造された可能性がある」または「遺伝子組換えによって製造された」と表示しなければならない

さらに、

○遺伝子組換え作物を多少なりとも含む製品には「ナチュラル」やそれと似たような意味の言葉を使った表示をしてはならない。包装にも、広告にもそれらの言葉を使ってはならない。

ということもさだめられています。

遺伝子組換えの飼料を与えられた肉は表示の対象とならず、またレストランなどで供される食事も対象外とされています。

加工食品の場合、原材料の何が遺伝子組換えなのか、というところまでは表示されず、一括で表示されることになるようです。

(参考資料:H.112  AS PASSED BY HOUSE AND SENATE

http://www.leg.state.vt.us/docs/2014/bills/Passed/H-112C.pdf

今後気になるのは、こうした州法を無効にしてしまう連邦法を成立させようとする業界の動きです。バーモント州の法律が来年7月に実際に施行されるかどうか、まだ予断を許さないといえるでしょう。

追記

2014年5月8日、ピーター・シュムリン知事は法案に署名しました。

-安田美絵 ルナ・オーガニック・インスティテュート(マクロビオティック料理教室&持続可能な食の学校)主宰

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